「やすらぎマインド」に対する心得
「やすらぎマインド」は、大泉学園実習ホームグループの職員が持つべきマインドであり、これこそが他団体の職員との決定的な差異であり、誇(ほこ)りです。
1.自らの足で立つ。(勘違(かんちが)いするな。我々は公務員ではない)
福祉の仕事をしているからと勘違(かんちが)いしないでください。私たちは、公務員ではありません。最後は、国も、都道府県も、市町村も、誰も助けてはくれないのです。
信頼はしても、決して甘えてはいけないのです。もたれかかりもいけません。
攻め(開発)を忘れ、守り(保身)に走ったら、私たちは終わると心得ましょう。
自らの足で立つこと(経済的自立)を、最終目標とするのです。
2.福祉を担うのは自分と揺るぎない信念をもつ
私は、世界を平和にできるのは福祉だと確信しています。
そのためにも、福祉を担う人たちが、世界から注目をあびて、積極的に活動してもらいたいと願っています。
法華経の従地(じゅうち)涌出品(ゆじゅつほん)のなかで、お釈迦(しゃか)様(さま)は他の国から来た菩薩(ぼさつ)の、娑婆(しゃば)(俗世間)を救うための協力を断りました。一方、その任務を地から湧(わ)きだした多くの菩薩(ぼさつ)に託す場面があります。地から湧(わ)きだした菩薩(ぼさつ)というのは、現実の世の中で苦しみや悩みの中で修行をつづけ高い悟りの境地にたった人々です。
やすらぎが、現場第一主義をとる理由もここにあります。実際の現場を知ることなく実情にあった福祉事業など成り立たないのです。それゆえに、福祉を担えるのは、現場に降り立ち日々格闘している者たちのみです。
ぜひ自信を持ち、誇りを持ち、信念をもって日々修練してください。
3.常に挑戦者たれ
日々生活は変化しています。福祉事業も常に変化・向上しなければいけません。
福祉は歩みを止めた段階で、現実世界から遊離する宿命にあります。
そのため、常に現場に身を置き、ニーズを吸い上げ、新しいサービスを開発しつづけなければいけないのです。
ただ、今までの福祉は行政にお膳立てしてもらった福祉であり、法人自らが開発するという一般企業では当たり前のことが、行われてきませんでした。これからは、自らが事業を開発・実行する機能と能力をもたなければいけません。事業の開発は、未知のものへの挑戦です。この挑戦なくして、あらゆる人に生きる夢と勇気と希望は提供できません。
4.夢を創出する
夢を語れぬ者に未来は創出できません。夢ありてこそ、そこに道は通じます。どんなことであっても、夢物語と軽んじてはいけません。
理念には「夢」を提供することを掲げています。誰しもが輝かしい未来が描け、生きがいを追求でき、自分を奮い立たせることができるような「しくみ」を創出しなければいけません。
5.傍観者にならない。(私が守るという強い信念をもつ)
世の中に困っている人がいて、もし、福祉団体と称している団体が無関心であったならば、罪は倍増すると思います。住民が福祉団体に抱くイメージは愛に満ちた慈善団体ではないでしょうか。それが、自分の担当外だからと無関心であったならば、助けを求めた人の最後のよりどころはどこになるのでしょうか。たとえ、わからない事であっても無関心はいけません。今はできなくても、関係機関に繋げる努力が必要です。そして、いつかはお役に立とうと決心することが重要です。
施設運営をする社会福祉団体は、往々にしてそうなりがちです。自分の所の利用者で手一杯という気持ちはわかりますが、団体の考え方がそうなってしまったら目も当てられません。最近の老人ホームは、地域において目を見張るほど豪華な外観も珍しくありません。それが、外部を寄せ付けないとなると、豪華な建物が、反面、乗り越えることの出来ない城壁になってしまうのです。
6.風景を作る
前項で、何事であれ無関心になるなと述べました。しかし、福祉団体は、関心を寄せるだけでは失格です。関心があるということを、積極的に世の中に示さなければいけません。
社会学では「風景の力」と称していますが、小さな光景であっても定着することによって大きな力を発揮するというものです。
アメリカの犯罪学者ジョージ・ケリング博士の「割れ窓理論」によると、一枚の窓ガラスの割れを放置すると、町全体に非行が広がるそうです。ニューヨークでは、これを応用し、窓ガラスの割れだけでなく、地下鉄の落書き消しや無賃乗車の無法者の徹底検挙によって、劇的に犯罪数を減らしました。
福祉の風景といえば、段差解消の町並みや車椅子での外出風景などです。「やすらぎ」が創り出さなければいけない風景は、「皆、あなたを忘れていないし見捨てないぞ」というメッセージを込めた活動です。「風景の力」がすごいのは、それまで無関心だった人にまで影響を及ぼすことです。インターネット、印刷物、映像、イベントを駆使して、対外的な情報発信は積極的に行わなければなりません。
福祉の風景の一つに「赤い羽共同募金」があります。これこそ、「日本人は無関心でないよ」とのメッセージなのです。単にお金を集める募金活動ではないので、福祉団体は大いに協力せねばなりません。
7.軸足をずらさない
私達は、今後多岐にわたる事業展開をしようとも、その中心は社会福祉であり軸足は常にそこに置かなければなりません。自らの歩いている道を、決して見失ってはいけません。
8.上善(じょうぜん)は水の如(ごと)し
「上善(じょうぜん)は水の如(ごと)し」は老子(ろうし)の道徳(どうとく)経(きょう)の一説です。「最高のまことの善(ぜん)とは、たとえば水のはたらきのようなものである。水は万物の生長をりっぱに助けて、しかも競(きそ)い争うことがなく、多くの人がさげすむ低い場所にとどまっている。そこで、「道」のはたらきにも近いのだ。」(訳:金谷 治)
福祉を目指す者は、老子が謂(い)う水のように振る舞うのです。
福祉の担い手は、あたかも水のような存在です。普段はあまり目立ちませんが、生物にとって無くてはならない存在です。日陰の存在どころか、最も重要で輝かしく光るのです。
朝日に輝くまばゆいばかりの湖面を見たことがあるでしょう。朝日の役目は「やすらぎ」です。かならずや、福祉に携わる者を光り輝かせるでしょう。