グループ会長・理事長あいさつ

34年間の思い出、そしてたびだち

会長 馬場 八重子 大泉学園実習ホームグループ
会長 馬場 八重子

平凡な主婦であった私を、福祉の世界に招き入れた主人が亡くなって、34年が過ぎ去りました。私も知らず知らずのうちに齢(よわい)を重ね、いつの間にか93歳になってしまいました。

ひたすら前だけを見て歩き続けてきましたが、ふと後ろを振り向くと、始めたときは誰もいなかった職員さんが、いつの間にか800名にもなっていました。私がこうして元気に現役を続けられるのも、この方たちの、励まし、支え、後押しがあったからに他なりません。なんという幸せ者でしょうか。

私は、大泉学園実習ホームを無認可の福祉作業所として昭和52年8月15日に立ち上げました。今は亡き夫の後押しはありましたが、無い無い尽くしの中での不安定な船出でした。しかし、徐々に実績を積み補助制度も充実してきて、また、精神の障害を持った方も受け入れ地域福祉の中で無くてはならないものとなっていきました。 当時は、認可を受けた立派な施設を作るのが1丁目1番地の目標でしたが、実質的に都内で認可基準に適合した施設を民間が造るのはほぼ不可能でありました。そんな状況で、様々な要件が緩やかな小規模福祉作業所(通所訓練事業)という制度は画期的なものであり、昨今の主流となった在宅福祉・地域生活支援の先駆けとなるものでした。

利用者も着実に増え、職員体制も充実し制度上も安定してくると、基本に立ち返り親御さんが一番心配している「親亡き後」のことを考えなくてはならなくなりました。この人たちの真の幸せを築くためには、やはり不安定な無認可施設だけではなく、社会福祉法人を設立して法内施設を造る必要性を痛感していました。いざ、障害者施設を造ろうとなると、今の時代、多くの人が「それは良いことだ、必要なことだ」と理解を示してくれます。ところが、建設する段階になると「そんなもの隣にできては困る、他でやってくれ」と反対の声が上がります。総論賛成、各論反対ということでしょう。悲しい気持ちになりながら、理解を示してくれる土地を捜し各地を転々としました。縁有り、千葉県の君津市に土地が見つかり、社会福祉法人を設立し知的障害者の入所施設を完成させたのは平成3年になっていました。続く平成4年には我が故郷栃木県大田原市に、請われて新たな法人を立ち上げ特別養護老人ホームをオープンさせました。さらに、千葉・栃木と活動範囲を広げましたが、出発点の練馬区に戻り平成6年にやはり法人を設立し、特別養護老人ホームを開設させます。その後は各々の社会福祉法人が地道な努力を重ね、それぞれが事業展開を進め確実な実績を積んでいます。

大泉学園実習ホーム創立から34年が経ちましたが、その間に3つの法人を作り多くの施設を展開しているのを見て、時々「その秘訣は何ですか」と尋ねられます。しかし、その質問に対する明確な答えはありません。しいて言えば、園長、理事長、施設長である私が真に足りない人間であったことが、このグループの発展をもたらしたのではないかと思います。私が足りないからこそ、多くの周りの人が、それを補うために「力を貸してやろう」「助けてやろう」と一生懸命後押しをしてくださる。そのご協力、助け船があってこその現在の姿があるのだと思っています。勿論、その間総ての事が、順風満帆であったわけではありません。悲しかったこと、つらかったこと、悔しかったことも多々ありました。ついつい怒りの心が、込み上げてくることもありました。その様な時、私は仏教の教えにある『だい達多だったぜんしき』という言葉を思い出しました。提婆達多は、お釈迦さまの弟子でありながら、何度も師であるお釈迦さまを殺害しようと企てます。しかし、お釈迦さまは「提婆達多は私に悟りを開かせてくれた善知識(最高の友)である」と言われています。同様の事が、キリスト教でのイエスとユダの間にも見られるのは面白いことだと思います。物事をこの様に受け取ることこそが、成功の根本であり、平和の原点だと確信しています。提婆達多がいてこそ、苦労し人の心は磨かれ本物になっていくのです。提婆達多がいてこそ、施設の運営は安定し向上していき、法人の経営は盤石で強固なものになっていくのです。

小さな小さな実習ホームは、我が大泉学園実習ホームグループの連綿と続く真心のたて糸です。千葉、栃木、東京で活動する各施設・事業はよこ糸です。この大泉学園実習ホームグループのたて糸、よこ糸が織りなす錦の布で、それぞれの地域の福祉を、日本の福祉を包み込んで行きたいと思っています。

平成30年 夏

合併によって理念を実現しよう!

平成29年4月、社会福祉法人章佑会は、グループ法人の教友会(千葉県)および清友会(栃木県)と合併をして、新たなスタートを切りました。合併の目的は、ただ単に体制を大きくすることではありません。多様な人材の活用とノウハウの共有によるガバナンスの強化です。まさに将来へ向けた布石であり、確固たる決意でもあります。

現在、社会福祉法人の舵取りは極めて難しいものがあります。労働人口が減り続ける中で、高齢社会のピークを迎えようとしています。社会保障費の増大が確実視され、事業収入は増えるどころか減ることさえ予想される環境下で、ステークホルダー(利用者、職員、地域住民等々)全ての方たちの利益増大を図らないといけないからです。利益とは必ずしもお金だけを意味しませんが、時にはステークホルダー間で相反する状況も生まれます。その対応を誤れば、収入が減るばかりでなく世の中の信用も失い、経営者失格の烙印を押されかねません。まさに、近江商人の「三方よし」の精神が求められているのです。

理事長 馬場 康雄

「三方よし」とは、買い手も売り手も幸せなら世の中も平和になる、と言うような意味です。売り手も買い手も幸せになる商いとは、お互いに相手のことを思い、我欲を抑えて相手の利益を欲することです。これは取りも直さず、私どもの行動指針である「やすらぎ福祉道」の精神に相通じるものがあります。
「やすらぎ福祉道」にはいくつかの指針が示されていますが、根本を突き詰めると「相手の気持ちになる」に行きつきます。結果、相手の喜びや悲しみを我が事のように思え、慈しみや敬いの心も芽生え、奉仕の心が湧いてくるのです。前述の近江商人の商売十訓に「商売は世の為 人の為の奉仕にして 利益はその当然の報酬なり」という言葉があります。福祉も商売も社会の営みに違いは無く、人様第一に変わりはありません。

では、合併をして、つまりはガバナンスを強化して具体的に何をするのか。私たちの理念である「あらゆる人に生きる夢と勇気と希望を提供する」ことを実現するのです。夢によって生きる糧を得て、勇気によって苦を乗り切る力と手段を得て、希望によって人生を構築する術を知ってもらうことによって、あらゆる人の心を豊かにして、「三方よし」の平和な世の中を実現するのです。この時初めて、合併は成功だったと胸をはって言えます。
さあ、今すぐ行動を開始しましょう!